【事例あり】和洋折衷な家とは? 部屋に取り入れたい内装の例

和洋折衷住宅 注文住宅

生活様式が洋風に変わっても、畳の間や障子は家のどこかに欲しいもの。今回は洋風の住まいに和テイストを程よく調和させた、和洋折衷住宅についてご紹介します。

編集 平成建設

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和洋折衷の家とは?

和洋折衷建築とは、和風と洋風を意図的に織り交ぜた建築物のこと。西洋文化が大量に流れ込んだ幕末から明治初期に発生したと言われ、同時期には当代大工たちが伝統的な技法をもって西洋建築を模倣した「擬洋風(ぎようふう)」という様式も流行しました。

当時は学校や公的機関、ホテルなどの建築に用いられていた和洋折衷様式ですが、時代が下がるにつれて個人の邸宅にもその影響が及ぶようになります。現在、「和洋折衷住宅」と個人邸に使われる場合は、和風のデザインを取り入れたモダンな洋風建築や、明治初期を感じさせる和洋が混在するアンティークな建物のことを指すことが多いようです。

和洋折衷の意味

「和洋折衷」とは読んで字の如く、和風と洋風の良いところを一つにまとめる(折衷)という意味。従って、一言に「和洋折衷住宅」と言っても、外観含め住まい全体を和洋折衷にした住宅や、一部の部屋を和風(洋風)にした住宅、インテリアで和洋折衷を表現する住宅など、どこまで融合させるかはケースバイケースです。

新築の場合、洋風建築に和風テイストを加えて和洋折衷とする事例が多く見られます。一方、リノベーションの場合は、和風の中古物件を探し、洋風のアイディアを取り入れることが多いようです。

また、二世帯住宅を建築する際、好みの異なる二つの世帯のバランスを取り、共用するリビングや外観を和洋折衷にして折り合いをつけるケースもあります。

和洋折衷の「和」パーツ

真壁、畳、欄間、障子や襖、無垢の木や和紙のような自然素材、塗り壁、梁、間接光を活用した照明計画、漆塗り、平屋

和洋折衷の「洋」パーツ

煉瓦、フローリング、吹き抜け、ガラス、薪ストーブや暖炉、ソファやベッド、モダンな照明器具や建材、ミニマルな外観・インテリア

和洋折衷な家の特徴

近年、個人邸は洋風のデザインをベースにすることが多いため、耐震性や気密性、断熱性を向上させる構造や建具は、洋風住宅を基準にして開発されています。それらの優れた性能を取り入れつつ、和風住宅の持つ木や和紙の素材感や、文化的な背景をデザインに盛り込んだのが「和洋折衷住宅」。二つの文化の良いところを受け継いでいるのが特徴です。

洋風建築の特徴とメリット

ベッドやソファのような高さのある家具を取り入れることで、床に座ったり布団を敷いたりするよりも腰や脚に負担がかかりにくくなり、生活が楽になります。また、吹き抜けのような、上方へ広がる空間を設けることもできます。

和風建築の特徴とメリット

高温多湿な日本の気候に合わせて発展したため、特に夏季を快適に過ごせるような工夫が施されています。調湿性能の高い漆喰壁や開け放つことのできる襖・障子、日差しをコントロールする深い軒などに加え、木や和紙、い草のような、手触りが良く温かみのある自然素材を取り入れています。

中古住宅を購入して和洋折衷にリノベーションする場合は、耐震補強や断熱性アップの工事が必要になるかもしれません。住まいの意匠に和風味を残しながら、家事動線の整備、採光の確保、畳からフローリングへの変更など、洋風建築の構法・技法を取り入れて暮らしやすい住まいをつくりましょう。

和洋折衷な家を実現するために取り入れたいアイディア

和洋折衷住宅をつくるコツは、和と洋のバランスです。モダンな住宅にしたい場合は洋風をベースに和風のインテリアを、レトロでアンティークな住宅にしたい場合は和風をベースに洋風のインテリアを取り入れると良いでしょう。

街並みに合わせた外観

外観を和洋折衷にしたい場合、洋風建築をベースにするのであれば、古い洋館風のデザインよりもモダンなデザインがおすすめです。直線で構成されたスタイリッシュな建物に、アクセントとして木材を組み合わせることで和洋折衷の外観になります。

和洋折衷の外観

また、外観のベースを和風にするのであれば、屋根の形状を工夫してみましょう。片流れ屋根や大屋根、左右の長さが不均一な屋根をデザインに取り入れると和洋折衷なイメージになります。洋風なデザインに和の素材を、和風のデザインに洋の素材を組み合わせるのもお薦めです。

和洋折衷な外観

フローリングと畳を活用する

フローリング貼りの部屋に畳スペースを設けることで、手軽に和洋折衷な空間を演出することができます。おすすめなのはLDK。リビングの一角に畳スペースを設ければちょっとした客間として使えますし、更に畳スペースを一段高くすれば、和と洋のメリハリがつき、かつ、床下を収納空間として活用することもできます。

小上がり和室

フローリングと畳を使ったテクニックでは、それぞれの役割を反転させることで、和と洋が程よく調和するスタイリッシュな空間が生まれます。和室の畳をフローリングにしたり、通常は板張りの廊下に畳を敷いたりしてみましょう。

格子をデザインに取り入れる

和洋折衷住宅の場合、建具に襖を用いると和風に、ドアを用いると洋風に偏るので、空間や部屋を仕切るには「格子戸」がおすすめです。

和風格子は様々なデザインがありますが、特に有名なのは升目状に組子を入れた「井桁格子(いげたこうし)」と、縦に組子を入れた「連子格子(れんじこうし)」の2種類。一方、西洋格子は縦横に斜めのラインを加えることが多く、こちらは「ラティス」と呼ばれます。

和モダンな格子戸

空間を仕切る建具には、目隠し効果のある連子格子がおすすめです。連子の間隔を調整することで視線の通りやすさをコントロールすることができるので、住まいのあらゆる場所に使うことができます。

一方、TVボードやエアコンの目隠しのような、横方向に長いものには横格子がおすすめ。西洋では「ルーバー」と呼ばれており、和洋どちらのデザインとも相性が良いので、導入の際には製作物の長辺に合わせて縦格子か横格子かを決めましょう。

照明を工夫する

和風建築は軒を深くして直射日光を遮る、程よく遮光する和紙を障子に使うなど、自然光をコントロールする技術と共に発達したため、穏やかな光源と相性が良いとされています。和風味を出したい場合は、部屋全体を明るくするよりも、陰影で魅せる照明計画を心がけましょう。

間接照明ならば、行燈のようなフロアライトや壁を照らすコーニス照明がお薦め。直接照明ならば、ペンダントライトに和紙製のぼんぼりをかぶせて程よく明るさを和らげるデザインが人気です。

シンプルなダウンライトやシーリングライト、スポットライトを採用する場合は、天井に板を貼る、もしくは梁を露出させるなど、照明の近くに木質感を取り入れるとバランスが良くなります。

軒と縁側を採用する

和風建築ならではの深い軒は、室内に取り込む光の強さを調整する働きがあります。軒は太陽の高度が高い夏には日よけとして機能しますが、太陽の高度が低くなる冬は日光を遮らず、居室を温かく保ちます。

縁側のある住まい

軒によって生まれる空間が縁側です。縁側は居室と庭の間に位置する板張りの回廊で、雨戸の内側にあるものを「くれ縁」、雨戸の外側にあるものを「濡れ縁」、縁側の中でも特に広いものを「広縁」と呼びます。縁側を設けると居室と庭の間に空気層が生まれ、夏の暑さ、冬の寒さを軽減してくれます。近所の方とのコミュニケーションの場でもあり、雨天時には洗濯物を干す場所になるなど便利な空間です。

コンセプト住宅「木かげの家」
木かげの家

日本人が培ってきた建築文化を受け継ぎつつ、現代の生活に必要な性能を備えた住まいー「木かげの家」

サンルームとして活用する広縁

軒と縁側は和風建築ならではの中間領域なので、洋風建築に取り入れることで和洋折衷な空間が生まれます。畳の和室ではなくフローリングのLDKと接続させれば、縁側はLDKの延長スペースとして使えますし、建具で仕切った時は、サンルームやランドリースペースとしての活用が見込めます。

和洋折衷な庭

和風住宅には坪庭がつきものですが、和洋折衷にするのであれば洋風の煉瓦を庭に組み込んだり、石を市松模様に並べたりするのがおすすめ。土を露出させず、玉砂利を敷くと洋風のアイテムとの相性も良くなります。また、坪庭よりも面積を広く取って中庭とし、ウッドデッキで空間を繋ぐプランも人気があります。

坪庭

土間を活用する

土間もまた、和風建築ならではの空間なので、洋風建築に組み込むことで和洋折衷の空間が生まれます。元々は玄関と居間を繋げる空間でしたが、最近はリビングの一角に独立した内土間を設ける間取りも増えてきました。

リビングの内土間に設けた薪ストーブ

玄関土間の場合は、ウォークインシューズクローゼットや、キッチンに直結するパントリーとしての役割がおすすめです。一方、LDKに設けた土間は、テーブルと椅子をセットしてダイニングスペースにする、内装制限のある薪ストーブやペレットストーブの設置場所にするという活用方法が多いようです。

アンティークな家具や建具を取り入れる

和洋折衷という言葉にはノスタルジックなイメージが付随します。インテリアに明治・大正・昭和初期に作られた建具や照明器具を採用してみましょう。

薪ストーブと吹き抜けのある和洋折衷空間

明治から昭和初期に作られた建具は現在のものよりも小ぶりなため、住宅に組み込む際には建具に手を加えたり、建具に合わせて枠を製作したりする必要があります。ハウスメーカーによっては取りつけに対応していないこともありますので、住まいにこだわりのある方は、柔軟に対応できる注文住宅での建築をお薦めします。 また、アンティーク建具はメーカー製の建具よりも断熱性能や防音性能が低下します。空調設備を整える、あくまでアクセントとして使うなど、暮らしにどう取り入れるかもよくご検討ください。

懐かしの和洋折衷住宅

住まいには、建てる方の人生観が反映されます。子供の頃に日々を過ごした祖父母の家、大きな平屋、縁側や掘りごたつのある和室、古い家具や建具、家族団らんを象徴する田舎の住まい……楽しかった子供の頃を思い出す「あの懐かしい住まい」を建て、自分自身も同じ環境で子育てしたいという方もいらっしゃいます。 家は大きな買い物です。妥協せず、理想の家づくりに取り組みましょう。

和洋折衷の二世帯住宅

二世帯住宅を建築する際、世帯ごとの好みが分かれることもしばしば。片世帯が和風建築を、片世帯が洋風建築を好まれる場合、二つの世帯が共用するスペースに和洋折衷様式を取り入れてみましょう。

バリアフリー性能の関係上、二世帯住宅は1階に親世帯、2階に子世帯を配置し、1階のリビングを二つの家族の共用スペースとして使用する間取りが多く見られます。生活のしやすさを考慮してLDKはフローリング貼りとし、その一角に小上がりの畳スペースを設ける、格子戸で畳スペースを仕切る、床は黒く塗装して和風に仕上げるなど、内装に和の要素を盛り込んでみましょう。親世帯・子世帯両方のインテリアに程よく調和しますし、2階の子世帯に和室がないという場合でも、共用リビングに畳スペースがあれば便利に使うことができます。

和洋折衷な家の事例紹介

 

ここからは和洋折衷の住宅施工事例をご紹介します。どれも懐かしい時代の趣を残しつつ、住宅設備や建築構造には最新の技術を採用した高性能なお住まいです。

和洋折衷な家の実例1 大正浪漫を感じる住まい

煉瓦と塗壁を組み合わせた和洋折衷な住宅

塗り壁に切妻屋根という和風の佇まいに、洋風の素材である煉瓦のデザインを組み合わせることで和洋折衷な外観となりました。

懐かしい雰囲気の土間空間

通り土間を設けた和洋折衷の空間。住まいの随所に組み込まれたアンティークな建具が印象的です。

可動式の渡り廊下が収納された通り土間

通り土間が住まいを分断していますが、床下に可動式の渡り廊下が収納されており、必要に応じて部屋と部屋を繋ぐことが可能です。照明器具や配線が、新築とは思えないアンティークな雰囲気を演出。

板張りの二間続きの和室

二間続きの板張りの和室は、襖ではなく格子戸で仕切られています。和室を板張りにすることで、和と洋が混在する独特な空間が生まれました。

アンティークな照明を採用した和洋折衷な空間

梁には古い寺社から譲り受けた立派な古材を使用。古い材は耐久性が気になるところですが、こちらのお住まいは高い耐震性を誇るSE構法を採用しており、古材は意匠として使用しています。

和洋折衷な家の実例2 縁側を設けたモダンな平屋住宅

切妻屋根の平屋

切妻屋根、垂木、塗り壁、下見板張りの腰壁等々、純和風の構成要素ながら、組み合わせ方によって和洋折衷とした外観。住まいの性能にこだわり、屋根は耐腐食性に優れたステンレス鋼板を採用し、太陽光発電システムを搭載しました。年間の一次エネルギー消費量が正味ゼロとなるよう設計されたZEH(ゼッチ)住宅でもあります。

アンティーク建具を採用した玄関

下駄箱はアンティークな民芸品を転用。LDKと客間につながる引き戸もアンティークの格子戸。和のアイテムも、柱が露出しない大壁と組み合わせると和洋折衷の趣が生まれます。

縁側と一体化したLDK

縁側を設けたいというのが、当初からのお施主様の希望でした。LDKは板張りなので、アンティークの引き戸を開けば縁側とLDKが一体化した大空間が現れます。

縁側

引き戸を閉め切れば昔懐かしい縁側が現れます。この空間が、夏の暑さ、冬の寒さを緩和する空気層となります。

和洋折衷な家の実例3 漆を用いた和洋折衷住宅

グレイの外壁に木の質感をプラスし和洋折衷とした住まい

グレイの塗り壁に木の質感をアクセントとした外観。住宅街の中で目を引くモダンな和様折衷住宅です。和のテイストで纏めながらも、建築自体は3階建ての洋風建築。

和モダンな玄関

軒天のレッドシダーと3枚引き戸の木質感がグレイの外壁を引き立てます。引き戸は和風建築によく見られるパーツですが、天井ぎりぎりまで高さを出すことでモダンな印象になりました。

コンクリートの壁面に漆を塗った「漆壁」

タイル張りの土間にはソファセットを配置し、お客様をもてなすスペースとして活用。玄関正面でお客様を迎える「漆壁」は、コンクリートに漆を塗ったもの。まさに和と洋の技術が融合した和洋折衷のインテリアです。

小上がりの畳スぺ―スを設けたLDK

一続きのLDKとライブラリースペース。リビングの一角に小上がりの畳スペースを設けています。

和洋折衷な家の実例4 和から洋へリノベーションした数寄屋

既存の数寄屋を活かしつつ大きなウッドデッキを新設したリノベーション

フルリノベーションに際し、荒れていた庭を整えました。大きなウッドデッキと人工芝を敷くことで、和風の数寄屋造りもぐっとモダンな印象に。

和室の天井を残した和洋折衷なLDK

小上がりの和室を板張りに変更し、LDKと一体化。完全な洋室にするのではなく竿縁天井や書院を残すことで、和洋折衷の空間としています。北欧家具との相性も◎。

スプーン加工で和モダンな縁側に

そのまま残した縁側は、床板をスプーン加工することで、一風変わったモダンな空間に生まれ変わりました。

和洋折衷な寝室

和室と縁側を一続きにした寝室。欄間や天井、書院はそのまま残しつつ、板張りの床、格子デザインの収納、モダンな照明などを取り入れ、和洋折衷のおしゃれな空間が完成。

和洋折衷な家の実例5 和モダンなスケルトンリフォーム

中古住宅を購入してフルリノベーションした住まい

中古住宅を購入し、和のテイストを残しつつ洋風の住まいにリノベーション。黒い外壁は一見すると板張りにも見えますが、旧宅の外壁は全て剥がし、性能の高いガルバリウム鋼板に張り替えています。解体作業の際、和室の荒板が立派だったので処分するのが惜しく、再活用を計画。ブロック塀の一部を崩して板塀を造作しました。

格子戸の収納

玄関の収納が不足しているため、廊下に収納スペースを新造。コートや傘を仕舞えるよう高さを出し、縦格子とすりガラスを用いた和モダンなデザインとしています。

縁側を繋げた大空間LDK

二間続きの和室と縁側を一つの大空間LDKへと間取り変更。キッチンと和室の間には襖がありましたが撤去し、天井ギリギリまで高さを出した格子戸に変更しています。床の間と押し入れがあった場所は板を渡してAVブースに、リビングの一角には小上がりの畳スペースを設けて和風味を残しました。縁側だった空間に柱が残っていますが、それもまた良いアクセントになります。

廊下の直上に明り取りの吹き抜けを設けた

2階は全面フローリング貼りに変更しました。かつて押し入れがあったところに1階の廊下へ光を導く吹き抜けを設置。障子で仕切ることで穏やかな光が2階にも降り注ぎます。

まとめ◆和洋のバランスを確認しましょう

 和と洋の空間を混在させる和洋折衷住宅は、洋風ベースに和風を取り込むのか、和風ベースに洋風を取り込むのかで大分印象が異なります。また、古い空間に新しい素材を持ち込むのか、新築の空間に古いアイテムを持ち込むのかによっても全く違う住まいになります。

建築家が手がけた歴史的な建造物から最近の個人邸まで、まずは沢山の施工事例を集めてみて、どれぐらいの案分が好みに一致するのか確認してみましょう。作りたいものがハッキリしていれば、住宅会社や設計事務所も具体的な提案をしやすくなりますし、好みに合いそうな家具やインテリアを探しやすくなります。

監修 山田 博

一級建築士/一級建築施工管理技士/インテリアコーディネーター/宅地建物取引士/福祉住環境コーディネーター検定2級

前職ではデベロッパーの建築部門で多くのマンション・戸建てプロジェクトを担当。現状は、法人営業を中心に各プロジェクトに参画している。

平成建設 企画部 山田 博