
戦後日本は建築物の耐火化を進める上で、木造であることを避ける道を選びました。その結果、現在多くの建築物は人工物に覆われ、暮らしの中で「木」を感じる機会は減少しています。
「S+Wハイブリッド耐震パネル」の開発は、耐火建築物でも木のあらわしを実現できないかという視点からスタートしました。
同時に、新構法が普及するためには容易性 ―― 施工のしやすさ、工期の短さといったメリット ―― や耐震性が必要不可欠であり、これら付帯条件もまた同時に検討を重ねる必要がありました。
様々な構造、構法、材料を検討した結果、行き着いたのが「鋼」と「木」が、特長を生かしつつ相互に補完しあう「ハイブリッド耐震パネル」です。
その特徴は、「木のあらわしが可能」「国内の間伐材を大量消費」「容易性を追求した耐火・耐震材」の3点。
都市部に再び"木"を甦らせ、低炭素社会を実現し、同時に国内林業を活性化させる、次世代の木構造です。
「S+Wハイブリッド耐震パネル」は、垂直荷重を全て鉄骨フレームが負担するため、木部は建築基準法上の「主要構造部」に当たらず、そのまま木面のあらわしが可能です。
枠や構造に木材を使用している既存の工法とは異なり、「S+Wハイブリッド耐震パネル」は木を「面」として使用。
木材を用いる面積が広いため、木の持つ整湿性や消臭性を存分に発揮することができ、同時に独特の美しい木目、柔らかな手触りを意匠に取り入れることが可能です。
「S+Wハイブリッド耐震パネル」はこれまでに例のない構造であるため、大学機関において燃焼実験、耐力実験を行い、耐火性・耐震性に問題がないことを確認しています。
森林を健全に保ち、その機能を高度に発揮するためには、「間伐」という樹木の間引き作業が必要不可欠です。
日本国内では一年間に約50万haの間伐が行われ、その際に生まれる500~700万立方メートルの間伐材が様々な用途に利用されていますが、その使用量は未だ限定的です。
「S+Wハイブリッド耐震パネル」は、EU圏では主流である「マッシブホルツ(木積層パネル)」を採用。マッシブホルツは木材を枠ではなく面として使用するため、間伐材の大量消費を推進します。
これは林野庁の目指す「間伐の推進、間伐材の有効活用の推進」に合致すると共に、林業家にとっては副次的な収入となり、国内林業活性化の一助となることが期待されます。
また、木面構造はCO2固定源としても非常に優秀ですので、大規模建築物、公共施設等に採用していただくことで、温暖化を考慮したエコロジーな建築物として社会的な意義、付加価値を生むことができます。
「S+Wハイブリッド耐震パネル」は、「鋼構造柱梁」「木パネル建込」「隅部接合物にて締付」というシンプルな3段階の工程により、通常の耐震補強工事よりも工期を短縮しています。
また、施工現場においても、建て方工事が容易な「乾式工法」を採用し、既存建物へのあと工事にも幅広く適応します。
乾式工法は湿式よりも騒音を抑えられるため、既存建築物を使用しながらの補強工事も十分対応可能です。
これら利便性の改善により、公共施設、大規模店舗、個人の住居への普及、そしてその結果としての、都市の木造化推進が期待できます。