
日本における漆塗りの歴史は非常に古く、最古のものは1万2600年前のものであると判明しています。
ウルシノキはアジア原産であり、その樹液を用いた漆器は古くから日本が西欧へ輸出する美術品の一翼を担ってきました。
しかし近年、安価な海外製品に押されて、漆の市場規模は大幅に縮小しています。
今回、平成建設では不可燃材であるコンクリートやケイ酸カルシウム板(ケイカル板)に漆を塗布する技術を開発。建築材料、内部造作材としての活用方法を開拓しました。
不燃材への漆の塗布は意匠性・耐久性に優れた新しい建材を生み出すと共に、縮小を続ける漆市場に新たな活躍の場をもたらすことでしょう。
通常漆の塗布は可燃材である木や紙に対して行われますが、建材としての活用を模索する中で不燃材であるアルカリ性の基材に塗布することに着目。
試行錯誤を繰り返し技術的な困難を乗り越えました。
不燃材への塗布が可能となったことで内装制限をクリアし、今後は幅広いシーンでの漆塗りの使用が想定されます。
あらかじめ漆加工した不燃材パネルとして用いることで現場での施工の手間を大幅に削減し、エントランスやホールなどの大空間へ後付けの装飾壁面としても活用できます。
また、直接塗布できるコンクリート建築においては、コンクリートのもつ表情を漆によって更に引き立たせ、新しい建築意匠を生み出すことにも成功しました。
長い伝統に培われた漆塗りの技術は、市場の縮小やそれに伴う後継者不足により、現在危機的な局面に立たされています。
しかし平成建設には漆を専門に扱う大工が在籍しており、伝統技術を新しい素材にどう活かすのか、日々研究を重ねています。
平成建設では今回の受賞を一つのステップとして捉え、今後も漆の用途拡充を通じ、伝統技術の継承とお客様に対する建築の提案力向上を目指してまいります。