
少しずつ変化してきているものの、建築業界はいまだスクラップ&ビルドの世界を抜け切っていません。
この新築住宅は、「再生・循環」「優れた素材を後世に残す」をキーワードに、建物を器(うつわ)としてとらえ、建具・ランプ・しつらえ・家具といった古材の再活用を前提に、建物全体をデザインしています。
「新築住宅における古材の利用」に於いて、古民家再生とは異なるアプローチにより、単純に古い材料を再利用するのではなく、素材を魅せる、風合いを楽しむことを考え、構造ではなく意匠として材を取り入れました。
構造や間取りなどの制限に縛られず、古材を素材として利用するこのプロジェクトは、優れた素材の継承を容易にし、その価値をさらに高めることができます。
設計士が施主とともに全国を飛び回り、集めた古材を再利用した新築住宅。 味わい深い風合いと、空間のしつらえが安らぎや落ち着きを与えてくれます。 もっとも特徴的なのは、京都の町屋を意識した通り土間。 床下に井戸水を流しており、夏はこの井戸水と二方向に設けた開口によって涼を得、冬は土壌蓄熱式床暖房を活用し、暖まった土間が屋敷全体を暖めます。 主居住スペースは、南面に対して土間を挟むことで直射日光の影響を受けにくく、一日の温度変化が少ない空間となりました。 吹き抜けのある通り土間から採光することで、明るさと快適さを両立しています。
明治から昭和初期につくられた繊細で洗練された建具は、年月を経ても色あせない品質の高さを身体で感じることができるデザイン。
同時に、大人の手が回らないほど太く重量感のある柱を磨き込み、大黒柱として使用。
天井を見上げれば、仏寺で使われていた黒光りする立派な梁が迫力ある表情を見せます。
現代の生活スタイルに合わせたプランニングに、古材を活かした伝統的な意匠。空間をコントロールする設備と自然の力を利用したパッシブデザイン。
最新の技術と年輪を刻んだ素材がここに結集しています。