
建築にサステナビリティを求める時、多くはハイテクな技術に行き着きます。しかし、大抵それらは高コストで誰もが採用できるものではなく、普遍性に欠けているのではないでしょうか。
平成建設世田谷支店は、誰もが施工可能で汎用性のある「在来工法=ローテク」を主軸に、様々な側面から建築におけるサステナビリティについて、独自の解を出した建築物です。
私たちは、より広い世界に貢献する建築的な持続可能性 ―― サステナビリティとは、「身近なものの問い直し」であると考えます。
一般的なRC造よりも階高を低くすることで材積を減らし、省資源に取り組みました。
各階に必要な天井高を確保しながら、メインエリアの梁を無くし、無駄な床厚を徹底的に省略。
その結果、同じ天井高を持つ一般的なRC造よりも階高を500mm削減することができ、三階建ての建築高を10m以下に抑えました。
また、後述のレイアウトの可変性を保持するために、電気配線や排水機能を二重床に集約、梁を取り天井懐をゼロにし、可能な限りフラットなフロアを実現しました。
平成建設世田谷支店には、ボイドスラブやメガ梁といった特殊な解は用いず、在来工法のような細い柱を組み合わせたフラットな構造体を採用しています。
この構造には施工上、「型枠がシンプルになり施工が早い」「コンクリート打設がしやすい」というメリットがありますが、更に工期の短縮化、施工のしやすさを追求し、鉄骨柱にスラブを編み込むように配筋することで、現場での溶接が不要となる新構法を開発しました。
通常の建築物に良く使われる石膏ボード、クロス、樹脂ビニル、単一塗装などの人工材は、その製造過程でエネルギーを必要とします。
そこで、石、木、ガラス、漆喰などの天然材をほぼ加工なしで使用することで、建築以前の、材料製造過程での省エネルギーに努めました。
天然素材には、ムラや色味、細かな不陸や割れなど、均一ではない風合いがあります。
天然素材の積極的な使用には、これらの風合いを「この建物、このタイミングでしか得られないもの」として、一つの表現にまで昇華させる意図もありました。
漆喰やコンクリート打ち放しの構造躯体などは、型枠の線や鏝の跡もそのままあらわしとし、平成建設の特徴の一つである「職人の手仕事」を、建物全体から感じていただける装いとなっています。
外郭をラーメン構造で固め、室内に出てくる梁や天井懐を削除した構造。
電気配線や排水機能を二重床に収めたり、空調機本体と吸気口を分離することで天井から空調機を除外するなど、フロアを可能な限りフラットな状態に保ち、長期の使用に於いても建て替えの必要がない、レイアウトの可変性を保持しています。
平面として邪魔にならない、150mm角という細めの鉄骨柱を数本入れることで、構造強度をクリアしました。
レイアウトはフロア全体を均一に扱うのではなく、機能や可変性、階高の高低をゾーンごとに選択・集中させることで、全体的な省エネ・効率性を追求しています。
平成建設世田谷支店は、構造、レイアウト、素材、時間など、「RC造」を様々な切り口で見直し、建築におけるサステナビリティとは何かを考え抜いた建築物です。
ぜひ一度建物の内部にて、平成建設の出した解をご体感ください。