WORK 140
平成建設で働く設計士夫婦が建てた平屋住宅です。平成建設の強みは何かを二人で検討し、職人の手業や自由設計の柔軟さを設計に取り込みました。 大工の技術を信頼して綺麗に仕上げるのが難しい構造用合板を用いたり、漆塗りの壁をアクセントウォールに取り入れたり、グッドデザイン賞を受賞した「七曲」を採用したりと、職人の手作り感を大切にしつつ、 自らは設計士として大胆な配置計画、動線計画を行っています。 同時に内装のテーマを「夕陽」と決めて配色を行い、旅行の思い出をデザインに取り入れる、こどもの成長を考慮して間取りを考えるなど、施主としての「理想の家」づくりも楽しんで行いました。
軒を出し、雨天時でも身支度がしやすい玄関アプローチ。土間を持ち出しにすることで軽やかな浮遊感を演出した。 外壁は汚れが目立ちにくく明るすぎないグレイを選択し、アクセントとして国産杉の木フェンスを設置。自然と玄関に視線が誘導されるような配置となった。
扉を潜った先には、廊下をなくした一繋がりのLDKが広がる。 玄関土間はダイニングに食い込むよう大きく広げ、空間の使い方にバリエーションをつけた。 植物を置けばサンルームのように使えるし、簡易的な作業場にもなる。 こどもにとっても土間はお気に入りの空間。コンクリートと木貼りの床を行き来して、足触りの違いや高低差を楽しんでいる。
眺めの良い方向に大開口を設けつつ、隣家と距離を取る、植栽を楽しむ、家庭菜園を設けるなどの用途を想定し、三角形の残地が生まれるように建物を斜めに配置。一番大きなスペースには三角形のウッドデッキを設置した。庇の長さを調整し、冬は土間に太陽光があたって蓄熱できるように、逆に夏は日差しを遮るように計画している。
住まいの中心に位置するリビングスペース。 大きなソファは設計士がデザイン・注文したオーダーメイド品で、背もたれ内部と足元にコンセントを設け、家電のコードが目立たないよう工夫した。 また、照明が設置されている飾り壁は、職人が丁寧に色漆を塗り分けた逸品。橙から紺へと緩やかにグラデーションを描いている。
小上がりの和室は敢えて光量を抑えた空間とした。 暗い場所や明るい場所、板張りの場所、畳敷きの場所、天井の高い場所、低い場所など、居室が一つに繋がっているからこそ、均一な空間を避けて変化を設けた。 家の中に複数の選択肢を用意し、季節や時間帯によって住人が居心地の良い場所を探して移動するイメージ。
木製ブラインドを下ろせば和室は個室にもなる。 床の間のねじれた床柱と木製スタンドは、大工が「七曲」の技術で制作した一点もの。 同様に垂れ壁のラインは、大工が実際に鎖を垂らして得た懸垂曲線を取り入れている。 物理法則によって生まれる曲線は美しく、和のテイストにも良く似合う。
ベッドルームの照明は、ウェグナーの「スリーレッグドシェルチェア」に合わせてデザイン・制作した。 木造でしっかり作っているところを表現したかったため、天井は敢えて構造の梁とロフトの床合板をそのまま表しとしている。 お客様には中々提案し辛いものも、自邸であれば積極的に取り入れることができる。
トイレの手洗い兼お客様用の洗面台として設計した、独立型の洗面スペース。 ロフト階段の下部にあるため天井を下げる必要があったが、板張りの天井とダウンライトによってデザイン性を高め、ネガティブな要素を感じさせない空間とした。
トイレには地窓を設け、植物が見えることで気持ちが良い空間を目指した。 トイレや洗面脱衣室の床にはウッドデッキに貼ったものと同じ素材を採用している。
内装のポイントは3つある。1つは「夕焼け」をモチーフにカラーコーディネイトされている点。 港湾に陽が落ちる1枚の写真から色をスポイトし、それぞれのパーツに当て嵌めた。 ソファのオレンジは太陽、壁のグレイは暮れなずむ空、床や天井の色も夕焼けの写真に近いものを選んだ。漆壁のグラデーションは橙から紺へと移り変わる空気の層を表現している。
2つ目のポイントは見える場所に構造材を使用していること。通常は下地として隠れてしまう構造材を「家具や内装として見せられる」形に仕上げるためには高い技術が必要になる。 同僚でもある平成建設の職人の腕を見込んで、敢えて難しい素材を盛り込んだ。 ダイニングのアクセントウォールは、構造用合板だからこそ生まれる偶然性のある木目やラフな表情がさらっとしたグレーの塗装壁とマッチし、絶妙なバランスを生んでいる。
3つ目のポイントは照明計画。一繋がりの空間だからこそ、明るさにムラができるように計画した。 天井はダウンライトを避けてアップライトで照らし出し、ダイニングにはペンダントライトを、リビングにはブラケットライトを設置した。 特にアアルトの「ゴールデンベル」は学生時代から憧れていた一品。この個性的な照明に負けない空間づくりを目指した。
ダイニングテーブルは「神代欅(じんだいけやき)」を面材にしている。 「神代」と名の付く木材は、地中で数百年から二千年ほど長期保存されていた太古の樹木を加工して作られる。 二千年前の材を食卓に使用したのは「浪漫を求めて」とのこと。 日本中を探すつもりだったが、運よく実家の近くで見つかった。
フリーハンドイマイ製のオーダーキッチンも、他のインテリアに合わせて構造材で制作してもらった。 面材は一見すると黒く見えるが、夕焼けの風景から採色しているため実際は濃紺。背面収納にも同じ色を使った。 勝手口の先は三角形になった残地のひとつで、将来的には家庭菜園として活用する予定。 キッチンにはカウンターを設け、家事をしながら眺望を楽しめるようにしている。
キッチン裏に設けた、グレイ×木目が美しいファミリークローク。家事動線を最短化するため、クローク内にドラム式洗濯機を配置している。 向かって左側の棚は洗面脱衣室に繋がっており、扉を開くことで衣類のやり取りができる仕組み。
こちらが反対側の様子。 下段に汚れものを入れるランドリーケースを配置し、上段に洗濯し終わった衣類を収納するため、洗濯動線はクローク内で完了する。 人ではなく衣類が行き来することで最短の洗濯動線が完成した。
新婚旅行で訪問したスイスの温泉ホテル「テルメ・ヴァルス」での感動を、少しでも再現したいとの想いから、洗面脱衣室はトイレを併設したホテルライクな空間となった。 ヴァルスストーンを模したタイルは外壁用の製品だが、光を当てた際の凹凸が美しいため導入した。 造作の洗面台は少し浮かせて地窓から光を導き、リゾート感を強調している。 洗面台の隅に乗せられているのは、旅行の際に入手した本物のヴァルスストーン。
浴室は、洗い場と浴槽はユニットバス、壁と天井は自由にデザインできるハーフユニットバスを導入した。 防水性が高くて機能的、かつ自分好みの空間をつくることができる。 三角形の残地を活かしたバスガーデンには浴室の照明と連動したスポットライトを設置し、入浴時に植物がライトアップされるよう計画。 忙しい毎日の中で寛ぎを得られる特別な空間となった。
ロフト収納に繋がる階段は蹴込板を奥に移動させ、本棚としても活用。
大容量のロフトスペースは、ライフスタイルに合わせて柔軟に使える空間。 障子を開けばLDKと繋がるため、夏は障子とロフトの窓を解放して高低差換気を行う。
ロフトからLDKを見下ろす。正面の大きなTVボードは設計士がデザインした。 大型のモニタを2台置け、かつインテリアにマッチする家具は中々見つからず、自らデザインした方が良いものができると判断した。 屋根勾配に合わせた高い天井は空間を広くダイナミックに見せるだけではなく、高さを利用して空気を循環させている。
大工の仕事を意匠に取り込み、住まいに合わせて家具を造作し、アクセントに漆や七曲を用いる。 同時に設計士として配置や動線を最適化し、施主目線で過去の思い出やこどもの未来を想ってプランニングする。 平成建設らしさを追求し、随所に色々な職人の手を感じられる家が完成した。
遠藤 創一朗 遠藤 この実
三浦 大毅 有賀 建樹 桜井 謙治
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