WORK 111
お施主様は既に軽量鉄骨造の賃貸マンションを所有されていたため、既存の物件との差別化を図り、打ち放しコンクリートのデザインをご提案しました。 周辺調査で需要の高かったワンルーム、1LDKの間取りを軸に、設計上クリアしなければならない天空率や日影規制、駐車場の附置義務を、優れた意匠としてデザインに落とし込んだマンションです。
一部に打ち放しのコンクリートを用いた外観。斜めに配置したバルコニーや途中でカットされた柱型など、意匠性を高めた外観だが、実は日影規制や建ぺい率、天空率といった諸条件をクリアするためのデザインでもある。
給湯器の目隠しを兼ね、黒のアルミルーバーをはしご状に配置。外壁のタイル・吹き付けリシン・打ち放しコンクリートは防汚性を高める光触媒などでコーティングした。 通りに面した1階住戸は法規上許される範囲で囲いを作り、専用庭を設け付加価値を高めている。
歩行者と自転車の動線を分けるイメージで、方形御影調のタイルと、緑色の洗い出しで仕上げ方を変えている。 手前の植栽はシラカシ、正面のコニファーはエメラルド。エントランスが北向きなので、日影にも耐え得る樹種を選定した。 館名の「パッシオーネ」はイタリア語で「情熱」という意味。
エントランスアプローチは避難経路を兼ねているため、「外部」の要件を満たすためには、壁面を全体長さの1/2以下に抑えなければならない。 構造設計と調整しながら短い壁を連続させることでこの規制をクリアしつつ、まるで柱が続いているかのようなビジュアルに仕立てた。
外壁とアプローチは焼杉板の型枠を使用したコンクリート打ち放し仕上げとし、意匠性を高めている。 お施主様より玄関の間口を広くしたいというご要望があり、エントランスは斜めに設置。外部からの視認性が高まるだけでなく、背後の通路の目隠しにもなる。
エントランス内には、外に出ることなく郵便物を受け取ることができるメールボックスを設置した。 床タイルは一見ランダムに見える割り付けパターンを検討してデザインしている。
1階の階段はエントランスの一部として捉え、デザイン性の高い、打ち放しコンクリートのストリップ階段とした。
斜めに配置したエントランスの背面を利用して、生活に不可欠な、宅配ボックス、メールボックス、駐輪場を設けた。 上段が垂直に昇降するサイクルラックは力も手間も軽くすみ、一般的な二段ラックよりも扱いやすい。
避難・採光のための空間を余すことなく賃料に反映できるよう、建物南面のスペースは専用庭として活用している。 こちらのプランは土間がバイクの駐輪場になるため、バイカーの需要も見込める。
ライフスタイルに合わせて複数のプランを用意した。こちらは単身者用のワンルームプラン。北向きながら大開口サッシによって十分明るい。
1LDKプランは、お施主様のご要望でR面(曲面)カウンターのセミオープンキッチンを導入。天井のクロスもお施主様が選ばれた「いぐさクロス」。 高い調湿性や脱臭性能を有している。細かいご要望に答えることができるのが自由設計の強み。こちらは3号室。
同じ設備を導入していても号室によって内装のテーマカラーが違う。こちらは5号室。 3号室とパーツは同じだが、フローリングと巾木、キッチンの面材、レンジフードのカバー、フルハイトの収納扉、ダイニングの飾り棚の色が異なっている。
インテリアに統一感を持たせるため、洗面化粧台もキッチンの扉面材と色柄を合わせてセミオーダーした。洗面水栓はお湯にも対応した混合水栓を採用。
異形鉄筋を用いたデザイン性の高い階段手すり。階段には、よく使われる長尺シートではなく金属製のノンスリップを設置している。 階段踊り場には採光のための開口部を設けており、隣地への配慮から型板ガラスを採用した。
南面最上階のバルコニー。ガラス庇によって法律上の採光制限を緩和し、建物を最大限南方へ寄せて容積率の消化を実現している。
四宮 良輔
木工事:飯塚 貴則 RC:髙橋 登、松浦 巧
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