雑記

お気に入りの「儀式」

通勤途中には水仙のつぼみが開花中です。もうそこまで来ていますね、春。

皆さま、こんにちは。平成建設藤沢支店の長野です。

藤沢ショールームでは、先日ご紹介したパールアカシアの黄色に加え、同じ色でも葉の色が濃い紫色をしたミモザプルプレアも咲き出しました。手前の白っぽい葉のパールアカシアとの対比があることで黄色がまた深みを増してきました。寒さが厳しいほうが紫が深くなるのですが-5℃ぐらいになると発育が悪いそう、ここ藤沢ショールームのある湘南エリアは穏やかなので健やかに発育してくれています。

住宅の現場も大詰めを迎え大工さんが作業を終える木工事完了が間近に迫ってきました。現場に向かう前に監督と下打ち合わせを兼ねてランチミーティングです。藤沢支店に近くの来鳴軒さんの赤いテーブルにて、サービスランチのカツカレーを素早く掻き込みます。現場の要となる監督との情報共有を図る貴重な時間です。

今回のお気に入りはこちらの住宅現場からの紹介、「儀式」です。

 

住宅に限らず建築を行う前には地鎮祭と呼ばれる、その土地の神様にどうぞよろしくという意味とこれからの工事の安全を願うための儀式があったりします。また上棟式といって新しい家の無事を祈願し、携わった大工さんや職人の皆さんを労う場もあります。昔はもっとたくさんの儀式が家を建てる間にはあって、例えば手斧(ちょうな)始めという儀式は工事を始めるに当たり式材を斧ではつる行為を神前で行い奉納するといったもので、これを新年の仕事始めに行うところもあります。大工文化も変遷を経て時代に即したものに変化しているんですね。

 

さてランチミーティングのあと向かった住宅の現場では、和室造作工事のクライマックスです。

柱間2間(1820㎜)に納まる長い神棚の設置です。複雑な端部処理を施されているのはかっちりとした固定をするために下地の柱や桟にしっかりと飲み込ませるための加工処理。仕上がってしまえば見えなくなる部分ですが、実に丁寧です。

この形状を現場の限られた道具で加工してしまう平成建設の社員大工さんの腕前たるや、素晴らしい!

固定部分に塗る接着面を集塵機で清める大工さんと接着剤を施す棟梁とが「一発」の掛け声とともに作業開始です。なんだ?「一発」って。

貴重な桧材なので無駄にはできない作業です。二人が息を合わせ慎重かつスピーディに運搬。

壁に飲み込ませるということは柱と柱の間よりも部材は長いため、斜めに傾けないと入りません。ただ固定した後はもちろん水平にしないといけないので、正面からの見えがかりは斜めにできないけれど、いったいどんな匙加減で加工がなされているんでしょうか?

少しずつ材は水平に向けて下降しながら下地に飲み込まれていきますが、微妙に右の入口の建枠に擦っちゃいそうかな、、二人の背後には監督が行く末を見守ります。

一旦、元い!後退の判断も的確かつ迅速に。裏側からも見上げで見えてしまう神棚は調整できる代が少なくて、どこまで鉋をかけられるかの勘所が試されます。

その間に固定部分の加工を覗いてみましょう。なっ斜めです!これが正面から垂直かつ下地に飲み込まれるための秘密でした。いったいどんな計算でこの角度は割り出されるんでしょうか?算術も長けてなければできない職業なわけです、流石高学歴大工集団。

さあ仕切り直しです。そぉーっと、そぉーっと、

かなりいいところまで降りてきました、幅に余裕がありすぎても仕上がりに隙間ができてしまいます。

バールでの調整に監督も助太刀です。いい感じ、いい感じ。

よしっ、交代!最後の締めは棟梁の出番です。ぐぅっと、ぐぅっと、

きたっ!!最後は当て木の上からガチッと叩き込んで、

完成っ。

化粧柱側もこの精度、髪の毛一本の隙間もありません。出来上がってしまえばなんともないように見えていますが、ひとつの納まりに掛けている所作はなんとも優雅で美しく、その場限りで消えてしまうものではあってもその残響がこの神聖な場の空気感を間違いなくかけがえのないものにしているのだと確信しました。

 

ところでこの難作業を棟梁は、修正なしの「一発」で仕上げようとしていたようです。恐るべし、、