雑記

お気に入りの「グレイ」

冒頭は平成建設ショールームのお庭から。桜の見ごろも過ぎ独特のギザギザの葉に白い花は、もうハマナス?かと思いきや実は今回は藤沢ショールームではなく静岡ショールームからの一枚でした。平成建設は静岡県内に沼津本社と静岡支店がありたまたま近くに立ち寄る機会があって訪問してきたのですが、こちらは小川が流れる石畳のお庭。ショールーム内には平成大工社員による数寄屋の茶室もありますが、和に偏りすぎない現代的なテイストが絶妙にブレンドされています。手入れも行き渡っていてすがすがしい気持ちの良いお店構えでした。

 

さて完成を間近に控えた木造住宅の現場の近況です。

壁のクロスも貼られ、最終段階の部材である階段の木製手摺。

今回の住宅ではまっすぐ登りきる鉄砲階段ではなく三分の一上がって踊場がありそこから直角に折れてさらに三分の二登るかたちの階段。木製の丸い棒二本が手摺子と呼ばれる金具で壁から支持されて取り付いています。通常は二本それぞれ分断されるところですが、手摺の用途としては手摺から手を離さずに連続して辿っていけるのが本来望ましい。そこで二本の手摺を金物で連続させる既製品がいろんな建材メーカーから出てはいるのですが、木製の人体模型の関節接合部風がいやらしい。悩んでいたところ大工さんから、こんなこともできますよという提案がこの写真。斜め方向から伸びてくる円形状断面の物体をひとつの平面で接合させる、絵で描けてもちょっとやそっと出来ないでしょうと思ってしまうところですが、平成建設大工集団のさりげない技術力たるや、、恐るべし。

もうひとつの紹介、紫がかった深めのグレイ色の鏡面仕上の下足入れです。

新しい家でこんな下足入れにしたいなあ、といったイメージを具体的に持たれている方は案外少ないのではないでしょうか。キッチンや床材や外壁などは思い入れが強い部分であることが多くその分世の中に出回っている商品の選択肢も幅広くあるのに比べ、建材メーカーなどが出している既製品のものはここ何十年と変わらない類のものしかありません。木目調のシート貼のものが多く、少しこだわったものではメラミンやポリといった樹脂でできた薄い板を貼ったものもあります。どちらもいわゆるビニルなのでお手入れもしやすいのですが、その分経年変化に魅力があるとはなかなかいえない。そのため設計者は目障りな下足入をなるべく置かなくてもよいように、シューズクロークと呼ばれる外物置を兼ねた靴専用の小部屋に至る裏動線を設けたりもしますが、スペースも無限に有るわけではないのでかえって無理やり感が出てしまい潔さに欠けることもままあります。

今回のお宅の床材にはクライアントの要望から民芸調の杉とアンティーク調の表面加工がされた赤身の強い無垢板、テイストが異なる二種類が採用されています。壁紙はそれぞれ床に合わせて選択されており、これ以上新しい属性は増やせない状況下での選択は、グレーの鏡面仕上げ。色そのものより表面の映り込みで光の関係性を重層させていきます。その存在が対立や分断や排除にいたることなく関係性の折り畳まれとしてありえたか否や。