湘南情報

建築旅記@葉山

先日の休日のこと。藤沢SHOWROOMの一部メンバーにて建築旅行へ行ってきました。建築旅行とは…建築関係者で集まって、色々な建物を見ながら、一般の方が気にも留めないような建物の納まり、空間構成、素材の選定などマニアックな話を繰り広げる旅でございます。方々でニュースにもなっていますが、深夜のポケモンスポットに集まる高校生と同じような感覚ですね。今回は神奈川県の南東部、葉山町へ行ってきました。

 

まず訪れたのが、『葉山の森』という名前の建物。ショートステイからデイサービスを扱う、いわゆる老人養護施設です。設計は新国立競技場の設計者に選定された隈研吾氏の設計事務所。建物の属性上、見学は難しいかと思ったのですが、一部エリアに限り見学を快諾していただけました。まず特徴的なのが三次元にうねる木製ルーバーで覆われた外観。これを表現するために設計者・施工者ともに相当な苦労をした痕跡が窺えましたが、部分的に苔が生えていて…設計段階でそこまでの予見は難しかったのでしょうか…

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エントランスホールを入ると、2層吹抜けのホールが広がります。L字型の階段で2階にある入所者の談話スペースまで直接繋がっています。格子状に組んだ木材が場所によってパーテーション・手摺・本棚と機能を変えて連続。勾配のゆったりとしたストリップ階段と浮遊感のあるボール型照明とが相まって、軽やかな空間構成。間違いなく建物の見せ場として作られた場所でした。施設を運営されている方に話を伺うと、開放的な空間は転落の可能性が高く、現実的には職員以外ほとんど利用されていないようです。作り手と使い手にギャップが生まれてしまった例かもしれません。

 

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私の中での一押しは階段下にあったこちらのソファ。空間に合わせてオーダーメイドされたものだそうです。座った時の座面の感触も自分好みで、持って帰りたいと思った一品です。ただ、こちらもご高齢の方からは座りにくいとの意見が多いようです…

優れたデザインを考えることはもちろん大きな要素ですが、実際に使う人の声に耳を傾けることの大切さを痛感しました。

 

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