平成建設の家づくり

03.鎌倉で家づくり|パッシブデザインについて考えてみた

鎌倉で建築中の「設計士の自邸」についてご紹介。この家づくりのオーナーは平成建設の設計士Kです。

設計士Kの家づくりの想いをひも解くと、住人としての住みやすさを追求する一方で、設計士として「パッシブデザイン」について深く考えた形跡がうかがえます。

<設計士Kに質問>
パッシブデザインとは?

パッシブを直訳すると「受動的」という意味になります。一言でいえばアクティブな(有限な燃料を消費して「機械を動かす」)ことを最小限に抑えつつ、その土地にすでに存在する日光・風・地熱などの自然エネルギーをうまく「転用・利用」して快適に暮らす術ととらえています。

パッシブデザインというと、言葉の響きは新しいですが、深い軒と縁側のついた日本家屋は、夏の涼のとり方などはとてもパッシブといえます。それを現代の断熱の技術も取り入れて、四季を通じて実現できないか、ということです。

<設計士Kに質問>
パッシブなデザインを念頭にどんな計画をされましたか?

パッシブな住まいにするためには、土地の条件を読み込んで設計する必要があります。 前回の記事でも紹介してもらいましたが、1年間古家に住んでみて、陽射しや、風の流れなどを感じることができました。その経験を新築のデザインに活かしました。数年おきに変わっていく高性能な設備機器に頼るのではなく、なるべく自然の力を利用した「普遍的≒ローテク≒ロングライフな建築的手段」によって快適な住環境を実現したいと考えました。そのことで象徴的なのが、建物の配置です。

建物は真南から約30度東に回転して配置することで太陽光を受け止めやすく

冬の太陽の軌道を検討した配置計画とすることで熱を集熱しやすくしました。屋根面で効率的に太陽光を受け止め、冬の暖房熱源とするために、建物を前面道路に対して平行ではなく、真南から約30度東に回転して配置しています。

土間のコンクリートに太陽光があたることで熱が放射され、部屋もあたたまる

1年間古家に住んでみたところ、1部屋だけ他の部屋よりも暖かい部屋がありました。南東にテラス窓があり、太陽光が長時間あたるリビングです。そこで新居でもリビングの位置は変えずに、太陽光が当たる部分を蓄熱性能の高いコンクリートに置き換えれば、暖かさが夕方から夜にかけても持続するのではないか?と考え、一番太陽光が当たる部分を「土間」にしました。お日様からの放射でコンクリートが温められ、室内もじわじわと暖まるというわけです。

1年間住んだ古家と、お気に入りの庭

隣接する庭もとても気に入っていたので、庭と家とがつながる住まいにしたいと考えていました。「土間」にすることで、床が低くなり、庭とよりつながる空間になるというメリットもあります。

軒の深い切妻屋根の南面には太陽光集熱パネルと薪ストーブの煙突を、北面にはトップライトを設けて、冬場の暖房や夏場の通風に活かす計画です。

<設計士Kに質問>
窓についてもパッシブなデザインを念頭に計画されたようですね

窓辺に厚みを持たせることで光が柔らかく届く

はい。窓を注意深く設けることで、室内の微気候を形づくることを試みています。また、窓からの室内への光の導き方(設計上、建物の「内側の輪郭」と呼んでいます)はデザイン上工夫しがいのある箇所であり、窓辺に適度な厚みをもたせることで室内の奥深くまで、柔らかい光を届けることを意図しました。結果的に電気を点ける必要も少なくなり、省エネにもつながります。気密性能を高めるために引き違い窓ではなく、開き窓を中心に選定しました。(土間と、和室だけが例外です)

ガラスは方位ごとに種類を変えました。南面は冬の日射取得を優先して、深い庇に大開口とペアガラスを、東西北面は夏場の日射遮蔽を優先して、窓自体を小さめにしトリプルガラスも併用することで、空調エネルギーを削減しています。玄関と土間だけは、特に断熱・気密性の高い木製のサッシとしました。

全館を空調することを前提としているため、外壁に蓄熱性の高い断熱材を充填しました。

<設計士Kに質問>
「びおソーラー」というシステムを導入されたと聞きました。

はいそうです。
屋根に設置された3枚のソーラー集熱パネルと、鋼板葺き屋根下に設けた通気層により、冬は日中の陽光で温められた空気が、夏は夜間の放射冷却で冷やされた空気がファンの力で1階の床下に送り込まれ、床吹き出し口を通じて1階室内に届けられます。バイメタルスイッチという、温度が一定以上/以下になるとファンが動く単純な仕組みで、冬は床下をコツコツと温めます。床下に使われるコンクリートは熱しにくく、冷めにくい性質があるため、室温を安定的に保つのに利用できるので、そこにファンで空気を送っています。これが「パッシブソーラー」です。
色々調べた中で、びおソーラーが気に入り選択しました。

集熱パネルで熱を集め、冬の冷たい外気をあたため循環させます

ロフトから腕をのばしてトップライトを開けると、外の風力で室内の温められた空気が自然に排出されます。春から秋にかけてはこの換気をこまめに利用することで、体感温度を快適に保ちます。

土間ダイニングには薪ストーブ。(内観イメージ)

冬の補助暖房として薪ストーブを採用しました。薪ストーブの熱もパッシブソーラーのファンを利用して、床下に戻せるよう、ロフト内に集まった温かい空気を回収できるようダクトにバイパスを設け、ダンパーで切り替えられるようにしました。ソーラー運転との切り替えは手動のスイッチですが、床下のコンクリートで蓄熱するしくみは共通です。夏の熱帯夜が続く時期以外はエアコンに頼らずに済むように、と考えています。

木は木らしく、鉄は鉄らしく、コンクリートはコンクリートらしく。流行り廃りのない恒久的な材料で、素材の持ち味がそのまま出るよう、適材適所に用いています。そうすることが結果的に建物の寿命を延ばすことにつながると考えました。また、透湿性のある壁紙やしっくいを用いたり、蓄熱性能の高い木質系の断熱材を使用したりすることで、梅雨のある関東の気候にも対応しています。


まとめ

見た目の美しさやデザイン性、生活動線だけではなく、「パッシブデザイン」についても深く考えられて設計された設計士Kの自邸。自然のエネルギーを活用することで光熱費が抑えられたり、太陽の光や、風といった自然を感じながらの生活ができるなどメリットがあります。一方で、建築費があがるといったデメリットもあるようです。

パッシブデザインを取り入れるためにはその土地の持つ特性をしっかりと見極めることが大切です。家づくりを考える際には「パッシブデザイン」についても、平成建設の設計士とご一緒に考えてみてはいかがでしょうか?


01.鎌倉で家づくり|連載スタート
02.鎌倉で家づくり|古家に1年間住んでみた


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