インテリアコラム

君の椅子

◆自分の居場所がある、という安心感◆

「生まれてくれてありがとう。
君の居場所は、ここにあるからね。」

そんな想いを込めた椅子を贈る。

聞くだけでじんわりと温かな気持ちになれるプロジェクト「君の椅子」は、家具の産地 北海道旭川市周辺の自治体から、年ごとに変わるデザイナーと地元の家具職人が製作した椅子を、まちに誕生した全てのお子さんへ贈る取り組みです。
高齢化が進む中で、新しい生命が誕生する喜びを分かち合える地域社会の再生を目指して、2006年に立ち上げられました。(現在、北海道の5つの町と長野県売木村が参加)

私がこの取り組みを知ったのは、3年程前に行われた建築家中村 好文氏の家具展にて、中村氏とお話をした時でした。話の中でふと出身を尋ねられ、旭川市とお答えすると、このプロジェクトのことと中村氏が初回の椅子デザインを担当されたことを、当時のスケッチを前にしてお話しして下さいました。

昨年2015年のデザイナーは再び、中村 好文氏。
初回の椅子を手掛けられてから10年という節目の年に、前回とは趣の異なる新たな椅子をデザインされていました。製作担当は初回の製作を担当した、大門巌さんの息子さんである大門和真さん。椅子づくりの技が10年かけて親から子へ引き継がれた、証の「椅子」という事でもあります。

□2006年 椅子画像□
君の椅子20062

□2015年 椅子画像□
君の椅子20152
写真提供:君の椅子プロジェクト
中川町有林・北大研究林の木材を使用し、名前・生年月日・プロジェクトロゴ・ナンバーの刻印が入った、世界にひとつだけの椅子。
生まれた時から大勢のひとに祝われ、迎えられるなんてとても素敵な取り組みですね。

◆キオクとイスの密な関係?◆

「君の椅子」プロジェクトの概要に、椅子は「思い出の記憶装置」と表現されていますが、マイチェアを持っていた者として体感的にとてもよく分かります。
私自身も幼いころに、家具デザイナーの祖父から「自分の椅子」を作って貰い、愛用していました。
“いつも”な生活のエピソードが、日常に密着した椅子という家具を使用する毎に身体に刷り込まれていくのでしょうか。今でもふとした時の何気ない動作から、こどもの頃の些細な記憶が突然呼び覚まされることがあり、椅子がきっかけのひとつとなっているのは確かだと思えるのです。

「君の椅子」は一般に販売されている商品ではありません。製作された椅子の数だけ、新しい命が誕生したということなのです。当初から個人でも参加したいとの要望があり、2009年秋からスタートしたのが「君の椅子倶楽部」です。
「君の椅子倶楽部」は、「君の椅子」に込めた思いに共感された皆さんが個人で参加することの出来る新たなコミュニティ。地域の枠を超えたゆるやかなネットワークです。詳しくは、是非下記URLからお問い合わせ下さい。

「君の椅子」「君の椅子倶楽部」について

今回のインテリアコラムは「君の椅子」プロジェクトに感銘を受け、記事とさせていただきました。身近な方や大切な方へありがとうという感謝の気持ちと、一緒に過ごした時間がシアワセな記憶として残りますように、との願いを込めて、君の為だけの椅子を贈ってみるのは、如何でしょうか。

以下、コンシェルジュお勧めのお子様用の椅子、スツールをご紹介します。

十人十色のニホン的寛ぎスタイル 村澤一晃×園田椅子製作所 /ZAGAKU 02

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日本人らしいくつろぎのポーズで和むシーンが目に浮かんできそうなのが、大人気ZAGAKUシリーズの椅子達。
中でもこのZAGAKU 02は腰かけたり、踏み台にしたり、フットレストや遊具の様な使い方も…と使用イメージが広がりやすいデザインですね。カバーリングシートでお手入れ、カラーコーディネートしやすいのも高ポイント。小さなお子様でも持ち運びしやすいので First chair にお勧めです。

ZAGAKUシリーズは全8パターンのバリエーションがあり、床にじかに座る生活に馴染んだ、日本人のDNAに響くラインナップが魅力。

巨匠デザインのロングセラー シンプルデザインの極みとは HANS J WEGNER/CH410 peters chair

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ハンス・J・ウェグナーも、子供椅子・家具をデザインしています。
巨匠に自分の為の家具をデザインして貰ったラッキーなキッズは、ウェグナーの親友ボーエ・モーエンセンの息子のピーター・モーエンセン。
ボーエ・モーエンセンから子供の命名の依頼をされていたウェグナーは、洗礼式に自分の父親の名前「ピーター」を授けると共に、椅子&テーブルをデザインし、贈ったと言われています。(諸説あるようです)

このピーターズチェアはノックダウン構造で、椅子は両側板と座面と背もたれの4つのパーツで構成され、簡単に組み立てが出来ます。随所に子供が使うことを考えた上での工夫と、合理的なデザインで長年各国で愛され続ける名品。
ピーターズテーブルとセットで、どうぞ。

椅子、時々テーブル、気分次第で遊具にも。 変幻自在のマルチな「コドモカグ」 Kristian Vedel/Child’s Chair

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ウェグナーに続き、デンマークからもう一点ご紹介します。木製のオブジェ「バード」でも有名なクリスチャン・ヴェデルの作品。

ニューヨーク近代美術館 MoMAで開催された展覧会”Century of the Child”でも紹介されたこの椅子、本体の細長いホールに赤と青のプレートをはめ込む位置によって座面の高さや用途の調整が可能。サイドテーブルやバウンサーにもなるマルチデザインとなっています。
ウェグナー同様、シンプルで合理的な設計は、流石の一言。

北欧家具を扱うインテリアショップは沢山ありますが、上記の椅子が店頭にある所はごく限られています。現在 peters chair、Child’s Chair どちらもショップで実物の確認が出来、新品の購入が可能な静岡市の SUQ さんにご協力いただきました。
展示品の有無や在庫は変動しますので、気になる方は事前確認の上、実物をご覧になってみて下さい。

ビジュアルとふわもこな肌触りがたまらない! オトナもコドモも癒されるスツール。 匠工芸/ANIMAL STOOL

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数年前のインテリアライフスタイルで心を鷲掴みにされた、インパクト大なこのスツール達。
弊社デザインブログでもご紹介をさせていただきました。

フェイクファーにくるまれたボディ、ふさふさしっぽ、表情たっぷりな脚デザイン。子供だけに独占されたくない、大人だってもふもふしたい!IFFT(Interior LifestyleLiving )会場でもひときわ目を引いていて、大勢のお客様がご覧になっていました。

もう、居てくれるだけで良いんです。ルックス&肌触りで思う存分癒されて下さい。

モノがヒトに与える影響とは? 「本物」に触れる事の大切さを伝える。 ヒノキカグ大正集成×株式会社Sdi×村澤一晃/MORITO chair

MORITO set

子供達には幼い頃からデザイン、機能美のあるモノに触れて貰いたい。安価な大量生産品ではなくきちんと考え、作られた家具を世に送り出すことで、子供の情操を豊かに育むお手伝いをしたい。株式会社Sdiの想いを、ヒノキカグ大正集成ががっちりと受け止め、デザイナー村澤一晃氏と共同開発したのがこのMORITO chair。
MORITOという名前には「森の人」という意味と、森を守る「守人」という意味があります。無塗装のヒノキで軽く、スタッキングも5脚まで可能。やわらかで温かみのある感触が特徴です。

この椅子は清流四万十川とその周辺にひろがる壮大なヒノキの森から切り出された、四万十ヒノキで作られます。ヒノキカグ大正集成ではこの森林を管理し、未来へと続く四万十川の風景をもつくるため、会社を挙げて苗木の育成にはじまり、何十年にもわたる世話を丁寧に重ねているのです。

使用木材のトレーサビリティを明確にし、素材を育む自然・森林を守り次の世代へバトンを渡してくれる大人がいること。
五感に響く家具を作ろうとする取り組みが、日本のあちこちで行われていること。
家具をきっかけに日本の森林についてや、素材・技術を未来に繋げようとするひとがいることを、多くの方に知っていただけるとインテリアに関わる者として嬉しく思います。

スチール×無垢材 「オトナ仕様」なkid’s chair miyakonjo product /TETSUBO kids chair

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小泉誠さんデザインの充実の子供椅子ラインナップ。あれもこれもご紹介したい! という気持ちを抑えてセレクトさせていただいた逸品はTETSUBO kids chair。

スチールの一筆書形態の鉄棒×厚みのある杉無垢材という、どちらも存在感がしっかりある組み合わせが、シンプルなデザインで更に活きていますね。「お子様の為のデザイン」というより、大人サイズのTETSUBO chairをきゅっとサイズダウンした椅子、といった風情です。
初めてこの椅子を見た時、子供の頃、大人に対等に扱ってもらえた嬉しさをふと思い出しました。

コドモ扱いしないで、と自立心が芽生え始めたキッズに如何でしょうか。

子供椅子の王道デザイン まあるいフォルムが人気です。 cosine/minis chair

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THE「子供椅子」と呼びたくなる様なこのビジュアル。
目に優しいアールのラインに、シナ合板の明るい木色×ホワイトのさわやかな配色が可愛らしいですね。画像のタマゴテーブルとのコーディネートは、お洒落なママのココロもがっちり掴んでベビー雑誌でも大人気です。

弊社の本社、三島ショールームにはcosineの子供家具やインテリア小物が沢山コーディネートされています。お子様でなくともときめくインテリアとなっていますので、建築のご相談、大工の技を見学がてら是非遊びに来て下さいね。

◆番外編◆ ポップでユーモラス☆キッズファニチャーに留まらない オブジェのようなルックスはインテリアのポイントに。 MAGIS/LE CHIEN SAVANT

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インテリアに詳しい方なら、このルックスでデザイナーが分かる方もいるのでは?
常に新しい発想と独創的な世界観で多くのファンを魅了してやまない、世界を代表するデザイナー、フィリップ・スタルク氏の作品です。
シェーン サヴァン、フランス語で「かしこい犬」と名付けられたこの犬は、跨って遊具のつもりで遊んでいるうちにいつの間にか机に向かう習慣が付いている…かも?
造形・色彩共にキッズファニチャーにありがちな、いかにも子供向けという印象はなく洗練された雰囲気が漂います。
スタルクファンの間ではエントランスで荷物置き、グリーンや花器を置く装飾台にベッドサイドテーブル等と生活の各所で活躍しているようです。

あなたなら、この椅子でどんなシーンを演出しますか?

今回は日本人が親しんできた木材を使用した椅子で、作り手の思いやエピソードが分かる物を中心に構成しました。自身の経験からも無垢材の手触り、匂い、変化してゆく色などがいつの間にか身体に、そして記憶に刷り込まれているので木の椅子に思い入れがあります。ご紹介したい椅子がたくさんあって、全てを載せられないのが残念です。

皆様と、皆様の大切な方の「思い出の記憶装置」探しの参考になれば幸いです。