正浪漫邸を依頼されたU様ご夫妻は、住宅雑誌や建築記事をスクラップしたり、訪問したレストランや旅館の構造写真などをファイリングしておくなど、理想の住まいに対する情熱を持っていた。そんなお施主様のたどり着いた理想とは、〈時を経て味わいを増したマテリアルを活かした家〉を造りたいというものだった。
角谷設計士はその要望を受け、お施主様と奥飛騨・山梨・静岡・箱根の各地を飛び回り、共に多くの建物を見ることで〈理想の住宅〉のイメージを共有していった。そして、寺社で使われていた柱や梁等の古材、明治から昭和初期の建具やアンティークの照明など、時を経て魅力が増した〝モノ〟たちを主役に据え、それらを生かす〈器〉として建物全体をデザインするという方針を打ち出した。
一般の新築住宅と違い、古材という不定形なものを取り入れる以上、事前の検証を綿密に行わないと、できあがりの印象を大きく変えてしまう。そこで角谷は古材の扱いに長けた土屋棟梁と密に連絡を取り、設計を進めることにした。着工してからも、週に一度はお施主様と角谷・土屋で打ち合わせを行うなど、情報を共有することを重視し、プロジェクトを進めていったのである。一番の見せ場ともいえる吹き抜け部分の梁の小屋組みは、平成建設の加工場にて仮組みし、梁の構成、手斧のかけ方などを角谷と土屋で吟味した上で、実際の現場へ運び施工するという、準備の徹底ぶりをみせた。

設計士と大工が協力してはじめて、生まれるものがある。

平成建設の設計士が他の設計士と異なるのは、すぐ近くに施工する大工がいること。しかも対等な立場で意見し合うことができるという環境だ。設計士と大工とは、建築に対して、別々の視点から向き合う職業。設計士が描く図面を、大工がその技術で形にする。彼らが協力して初めて、この大正浪漫邸宅のような、大工の技と融合したデザインが可能になる。
大正浪漫邸宅だけが特別なのでは決してない。平成建設では、規模の大小にかかわらず、このような協力体制が全ての物件で実現している。