近な漆塗りの建築 日本の神社仏閣など大きな建築には、内外に漆が塗られた歴史があります。金閣寺、銀閣寺、日光東照宮、上野東照宮などの内部や屋外部分には漆が大胆に使われています。また神社などの内陣にはあらゆる所に漆が塗られ、神々しい空間を創り上げています。お神輿に漆が塗られ、仏教寺院では仏像を安置する御霊屋などに漆が塗られています。このような宗教施設のみならず、日本各地では建築の中に漆を塗った部屋を使い続けて来た歴史があります。玄関周りや客間などの床や壁に漆を施したり、作り付けの棚や柱、ふすまなどの縁に漆を塗って来ました。残念ながら現在は合成化学塗料が主流になり、漆を塗った建築は特殊な空間のみの物に成りました。

15年で再生産できる漆の樹液 漆芸はウルシ科の木から取れる樹液で制作される芸術です。漆の木は東南アジアを中心に植性し、主成分がウルシオール、ラッコール、チチオールと分類されます。
日本では東北地方に多く植栽され、光合成が盛んになる6月半ばから、9月中頃にかけて木の幹に傷をつけて採取します。10月になると約15年位育てた木の周りをぐるりと傷をつけ、その漆の木はそこで命を終わります。生涯で約200gの漆液を採取できます。15年かけて200gは、少ないですが、化学合成塗料は、何億年もかけた植物の堆積が生み出した地下資源の原油からできています。これに対して漆は15年で再生産できるのは、有益な事です。

漆は乾かない 漆は空気中の湿度によって固化します。乾くとは水分が抜けて潤いが無い状態を指すので、正確にいうと漆が固まるのは「乾く」為ではないのです。漆が固化する条件として、20~25度の温度、65~80パーセントの湿度を必要とします。ラッカーゼという酵素が、漆の主成分であるウルシオールを酸化重合させて固まった状態となります。蒸し暑い日本の夏が、漆を固化させるのに良い季節です。

漆の強さ、弱さ 漆固化膜は土や水分の中に埋もれた時、その形状も美も変わりません。一度固化した塗膜は、塩酸、硝酸、硫酸、アルカリ溶液などの原液、煙草の火などの熱によっても壊されることは無い強さを持っています。キズも、鉛筆硬度でいうと7Hを超える固さまで耐える事が出来ます。唯、いくら強くても薄い塗膜であるため、塗られた本体が傷付くような衝撃には耐えられません。また、紫外線には余り強くありません。建築の屋外では、定期的に塗り直す必要があるのです。


無垢材の壁に、漆を時間差で塗っている様子。漆は固化すると濃い色になり、独特の艶がでる。左から塗り始め、右へ進むほど塗りたて。白っぽいところは無塗装の状態。

<#2へ>