激減する、日本の大工

世界に誇る日本の建築文化を築いた大工。その人口が激減し、木の文化・技術が衰退しようとしていることをご存じだろうか。右のグラフでも明らかなように、大工の人口は80年代の80万人から、2010年には40万人に半減している。しかも高齢化が進み、若者の占める割合は少ない。現代の木造建築は50歳以上の大工に支えられている。このままでは10年後にはさらに半減してしまうかもしれない。
なぜ、こんなにも大工が減っているのか? 原因の一つは、高度成長期に効率を優先する建築の販売システムが台頭し、建築が規格化されてしまったこと。熟練の技がなくとも建築できるよう規格化された住宅が増えることで、大工は高い技術を必要とされなくなった。また、下請けとなった大工は、価格決定権を奪われたことで賃金が下がり、技術を継承する弟子を雇えなくなってしまったのだ。
このまま日本の大工が減り続けると、伝統的な木造建築が建てられなくなるばかりでなく、修復すらできなくなってしまう。そして、日本の木の文化は衰退し、さらには絶滅してしまうかもしれない。

 

失われゆく大工の職能を社内で継承

木造建築文化の未来に危機感を抱いた社長の秋元は、大工の職能を継承するため、平成元年に平成建設を設立。木の文化・技術を育て、守り、継承する集団として、長い年月を費やし大規模な職人の教育システムを確立した。現代の技術や道具と、伝統的な技を融合させた21世紀型の棟梁(大工の長)を育て上げている。
一般な建築においては規格化・マニュアル化によって、技術を使わなくても済むようなシステムにすることで対応しているが、それでは技術の消失を早め、状況を悪化させるだけだ。スクラップ&ビルドの時代が終わり、多様化した現代社会の要望に技術力で対応するためにも、技術の継承を可能にする組織づくりを全国の建築業者が考えなくてはならない。平成建設は職人を育てる仕組みを作り、職人集団を形成することで、一つの解答を提示している。
平成建設の大工が目指すのは、大工兼現場監督、さらには設計や人材育成まで行う〈棟梁〉。図面を描き、建物を造る、そして未来を創る存在である。大工としての技量をはじめ、若手大工を率いる人間力、そして幅広い知識と教養を持ち合わせた大工が何十人、何百人も集まり、大きな力を発揮する。これが、平成建設の目指す大工集団である。

 

広がってゆく、活躍の場

平成建設が目指すのは、社員が職人だからこそ実現できる建築。つまり、設計士のイマジネーションと職人の技の融合だ。手間を惜しまずにつくる建築は結果として高価なものになる。本物の素材・空間に価値を見出す、高級住宅市場がメインターゲットになっていくだろう。

静岡県外には東京都日野市、神奈川県厚木市、相模原市、藤沢市に拠点を開設している。2014年には旗艦展示場として世田谷支店を開設。初の23区内の拠点であるこの支店から、都内の高級住宅・リフォーム市場に参入する。

また、技術力を更に向上させるために、京都へ進出する準備もある。いうまでもなく、京都は日本伝統の文化・技術の集積地。日本を代表する棟梁が多数存在する。しかし、彼らもまた後継者不足に悩んでいるという現状がある。社員大工を棟梁のもとへ出向させ、一流の技と経験を身につけ、国際的に通用する棟梁を平成建設から輩出しようという考えなのだ。

さらにその先には、壮大な計画がある。海外進出である。日本の科学・工業技術、美術工芸の素晴らしさは世界中に知られているが、建築技術はあまり知られていない。たとえばアメリカには様々な日本文化が定着している一方で、日本建築はほとんどない。数寄屋造りの名工である京都の中村外二棟梁が建てたロックフェラー氏の邸宅ほか数えるほどだ。
教養のある大工集団を持つ平成建設ならば、欧米で日本建築を提供することができるはず。〈メイドイン京都〉を掲げて、アメリカやヨーロッパの富裕層に対して本物の日本建築を提供し、その素晴らしさを伝えることが、平成建設の使命でもある。