〈平成建設 大工〉櫻井 謙治 × 〈宮大工〉田子 空道

工工事部技術顧問に就任した宮大工の田子空道氏と、平成建設〈棟梁〉櫻井によるスペシャルトーク。田子氏は、平成の大工集団をどう思うのか。立場は違えど、大工の道を求道する二人に聞く。

 

田子さんは、平成建設の技術顧問として、宮大工の技術や歴史を指導していますが、どのような理由で引き受けられたのでしょうか?

田子 それは秋元社長の日本一の大工集団を目指し、大工の地位向上を図るという話に共感したからです。大工は鎌倉時代では豊富な知識と技術を持つ、地位のある職だったのですが、昭和になって、工業化・合理化が進み作業が単純になってしまったため、伝統的な技術が失われ、その地位も低くなってしまいました。しかし本来大工というものは、設計も監督も、営業もすべて行った、いわば経営者でした。今一度、大工の存在意義を見直してほしいという想いがずっと心の内にありました。

 

櫻井さんは、田子さんからご指導頂けると聞いていかがでしたか?

櫻井 弊社には、全国から棟梁になりたいという高い志を持った若者が多く集まっています。その若者達にとって、田子さんの話は非常に良い勉強になりますし、私自身も、宮大工という自分の知り得ない世界やスキルを持っていらっしゃる方から教わる事が沢山あるだろうなと楽しみにしていました。

 

田子さんは、平成建設の大工に何を教えたいと思われますか?

田子 木造建築の奥深さ、歴史、世界観を伝えることで、大工のさらなる魅力を知ってもらいたいと思っています。大工というのはどこまで行っても修行。奥を知れば知るほど引き込まれていく。昔の人に比べたら、我々はまだ入り口に来たばかりです。昔は数十メートルを超える木造建築を造る技術がありましたが、今はどんなに新しい道具や技術が発達したといっても、昔の建物を再現することは出来ません。

櫻井 そうですね。昔の大工や職人は、寺社仏閣など芸術作品と呼べる程の建物を造っていました。偉大です。そういった大工の世界の奥深さは、何十年大工をやっていても尚、やりがいや面白みを感じさせてくれます。

 

講習での大工達の反応や様子はいかがですか?

田子 講義と実技を通して教えていますが、平成建設の大工の皆は知識が豊富で、理解力・判断力がありますね。今の住宅は合理化されているので、簡単に全体の仕事を把握できてしまうと思いますが、だからこそ、規矩術などの伝統的な日本建築の奥深さを教えると、非常に興味・関心を示してくれます。教えるほうも楽しくなってしまいますね。

櫻井 太古の建築の知恵は、すぐに実践に活用出来なくても、知恵の積み重ねとして、この先様々な場面で生かされると思います。すべてを理解していなくても聞いておくだけで、何かの機会で「あのとき田子さんが言っていたことだ」と一気に興味関心が深まる。非常に意義があると思います。

 

大工を社内で育成するという仕組みについてはどう思われますか?

田子 建設会社の経営の中で育成する仕組みを作った点は素晴らしいと思います。大工を一人前に育てるにはお金も時間も掛かります。ましてや集団となると体力のある会社経営の中で行なっていかなければ出来ません。他ではなかなか真似の出来ないことです。日本の大工人口が減少する中で、木造建築を担う大工集団を育てることはこの国の建築にとって、とても意義のある事だと思います。

櫻井 弊社の大工は、平成建設という会社を背負っているという強い意識を持っています。下請けや孫請けの立場から脱却しているので、お施主様に直接対応が出来るし、仕事の大小を問わず、お施主様の満足を追求出来ます。ものづくりの本質に触れることが出来るのです。また、求められているものも圧倒的に多い。丁寧で確実な施工はもちろん、会社を成立させる収益性、お客様に喜ばれる提案、また社内でも他部署との関わりを上手くやっていかなければならない。そういう部分では、多くの能力が求められるので大変です。しかし、やりがいがある。お客様と職人が会話をしている時の笑顔はとても気持ちの良いものです。

田子 日々、成長している大工達ですから、一年後二年後と、この先どんどん充実していくと思います。私はそのきっかけづくりになれればと思っています。

 

〈櫻井 謙治 Kenji Sakurai〉平成建設大工の棟梁。一級大工技能士。大工の父を見て育ち、高校卒業と同時に大工の世界へ。平成建設創立時に、夢の実現に近い環境を求めて入社。以後、造り手として、また指導者として第一線で活躍。

〈田子 空道 Kudo Tago〉平成建設大工工事部技術顧問。社寺建築設計・建築宮大工棟梁。1949年群馬県生まれ。江戸時代から続く宮大工の家系に生まれ、関東地方を中心に多くの寺社仏閣修復工事に関わる。伊豆修禅寺の創建1200年の大改修工事の設計・監理・棟梁を務める。