本を代表する建築家三氏は、平成建設主催のコンペティションの審査委員を務めるなど関わりが深い。今回の対談では、建築・ものづくりについて、様々な視点から話を伺う。

 

―今の日本の建築業界において、設計側と施工側が分断されているという現状に関して、どう思われますか?

 

 

かつては意思の共有が出来ていた。

 

富永 日本社会全体を含めて言える事ですが、建築業界もリスクに非常にナーバスになってきていて、なかなか新たなアイディアにチャレンジが出来ない現実があると思います。

 

 

 

長谷川 そうですね。今ゼネコンは、どこも標準化していて、こちらがアイディアを提案しても、同じような回答しか返ってきません。
これは日々実感していることです。

 

藤原 私はかつて、スーパーゼネコンの現場所長と仕事をさせてもらったことがありますが、昔は事業全体や社会を含めた大きな流れを注視して、例えばそれがRC造を鉄骨造にするくらいの大きな変更であっても、そうすべきという判断であれば変更するということがありました。それまでの流れとは異なる方向に大きく舵を取ることで、大きな意味・成果があったということを、設計側と施工側で共有出来ていたんです。しかし、残念ながら今では違ってしまっています。

富永 アウトソーシングが進んだことで、マネジメントを中心に行い、コストばかりを重視する傾向になっているのですよね。現場に権限もなくなってきたのでしょうね。最近は、面白いと感じる良い話がなくなってきたと思います。

 

 

そこには、建築の原点がある。

 

―平成建設では、職人達と一体となってものづくりをしていくスタンスを追求していきたいと考えています。皆さんは、設計者が職人と協同してものづくりをする体制についてどう思われますか?

藤原 学生の頃は、設計も施工も同じ立場で考え、自分達の手で仮設建築をつくったりしていたのですが、それが社会に出て設計事務所で働き出すと、急に設計側と施工側が対立関係になり衝撃を受けました。そういう意味で平成建設を見ていると懐かしい感じがします。「そうそうこれだよね、建築の原点」って思いますよね。

富永 平成建設は、職人や施工部門が内にあるから、新しいことにチャレンジしていける環境だと思いますね。現場の職人さんと話をして、その考えをうまく取り入れると、どんどんレベルアップしていく。私はその体験を通して、建築が面白い仕事だなと感じて、その時初めて一生やってもいいなと思った。

長谷川 つくることに対する〝原点〟なんですよね。そこに向かってシンプルに突き詰めて話が出来る。一設計士としても魅力です。

 

 

出会うべきは、現場の困難。

 

富永 今私たちは、自分が作ったものの問題点のフィードバックが出来ていなくて、次から次へと新しいことを実験しているような状態にある。これは問題です。

長谷川 そうですよね。止まってしまって進化・発見がない、自分自身が化けていけないというのは感じています。

藤原 実際、現場監理は他の人間に引き継ぐため、設計責任者とは名ばかりという感じで任されていない気がしますね。やはり設計者が出会うべきは現場の困難です。設計の段階で採用したアイディアが、現場でこんな苦労を生み出すことになったとか、或いは逆に素晴らしいものになったとか。そういうリアライズする中で出てくる出来事に向き合うことが責任なのだと思います。

長谷川 責任を持っていないのに持っているって、すごく気持ち悪い感覚ですよね。

藤原 これから私たちは、責任の取り方も考えるべきかもしれない。
例えば、現場で泥だらけの設計士がいていいのかも。

―平成建設は、そういうことも含めて独自のシステム、ロードモデルをつくっていこうとしています。設計士が本質に迫った所で設計し、現場を知ることで、新しい試みやアイディアにチャレンジし、発見し、問題点をフィードバックする。またその中で人を育成し、伝統を継承していく。そのサイクルを実現することが平成建設の使命だと考えています。

長谷川 私は先日、平成建設さんで講演させてもらいましたが、あのように多くの職人さんの前で話したのは初めてでした。他社にはないそういった強みや可能性が、平成建設さんにはあると実感しましたね。

富永 意義あることだし、日本の建築を変える可能性もあると思います。企業として、設計士として、建築の可能性にチャレンジしていってほしいと思います。

 

 

富永 讓 Yuzuru Tominaga

法政大学教授
富永讓+フォルムシステム設計研究所主宰
主な作品にひらたタウンセンター(2003年日本建築学会賞作品賞受賞)、成増高等看護学校(2008年日本建築学会作品選奨受賞)。

 

藤原 徹平 Teppei Fujiwara

隈研吾建築都市設計事務所設計室長
フジワラテッペイアーキテクツラボ代表
横浜国立大学大学院Y-GSA 准教授
隈研吾建築都市設計事務所にて 「ティファニー銀座」「北京・三里屯SOHO」「マルセイユ現代美術センター」「V&A at Dundee」など世界20都市以上のプロジェクトを担当。

 

長谷川 豪 Go Hasegawa

長谷川豪建築設計事務所主宰
Università della Svizzera italiana 客員教授
主な受賞歴としてSDレビュー2005鹿島賞、平成19年東京建築士会住宅建築賞金賞、第24回新建築賞など。