平成建設の設計力と、大工の技の融合。そして妥協を許さない姿勢。それらが如実に表れている住宅がある。

古材の記憶を次の世代へ継承していく手法を試み、グッドデザイン賞を受賞した、「大正浪漫邸宅」だ。
プロジェクトの中心人物、設計士・角谷にその想いを聞いた。

 

 

百年前の部材を表に出すステージを
作りたいと思った。

まいに対する夢やこだわりは十人十色。住宅建築は、いつでもそんな家へのこだわりを持つ施主との出会いから始まる。多くの住宅雑誌や建築記事、訪れたレストランや旅館で気になった造りを長年ファイリングし、住まいへの夢を温め続けていた施主。望んだのは、『時を経て味わいを増した古材を活かした家』だった。京町家のような通り土間。明治から昭和初期の建具やアンティークの照明、寺社で使われていた柱や梁。素材を魅せる・風合いを楽しむことを考えたデザインを目指し、古材による「再生」と「循環」をテーマに大正浪漫邸宅プロジェクトは動き出した。

設計担当者である角谷は、施主とともに奥飛騨・山梨・静岡・箱根と各地を飛び回り、多くの建物を見て施主とイメージを共有し、解体された民家や寺社から集めた古材を扱うギャラリーに何度も足を運んだ。多くの古材の中からイメージに近いものを見つけ出し、空間全体のバランスや、周囲の素材との相性を鑑みながら、どこにどのように活用すると良いのか、加工はどこまで手を入れるのか、取り付け可能かどうかを慎重に見立てていった。
古材という不定形なものを取り入れるには、事前によく検証しなければ美しく収まらない。それらの構成・仕上げ方の検討に多くの時間を費やした。

さらに大工の土屋と共に週に一度、施主と打ち合わせを行い、要望を聞き取り、適切な判断をしながら現場を進めた。施主のこだわりは細部にまで及んだため、吹き抜け部分に渡す梁の小屋組みを加工場にて仮組みし、梁の構成、手斧のかけ方などを吟味した上で、実際の現場へ運び施工した。古く美しい建具は、現在の住宅基準よりも小さかったため、建具に合わせて枠を製作したり、建具自体の高さ・幅・仕上げ等を修正して使用した。そういった一つひとつに時間と手間を惜しまず、丁寧に造られていった大正浪漫邸宅。長い間埋もれ、一度は輝きを失った古材が、土屋を始めとする大工の匠の技により磨かれ、形を変え、よみがえった。

 

 

今回、角谷はプロジェクトの目的の一つに、『百年前の部材を表に出すステージ』として、建物を捉えることを掲げていた。「このプロジェクトを通して、百年後もしっかりと使え、素敵だと思える価値のあるものづくりを、現代の私たちができているのだろうか。そのようなものをつくっていかなければならない、と強く想いました」