雑記

お気に入りの「勾配」

平成建設藤沢ショールームの建物際にある様々な低木は初夏に花が咲く種類が多く、その中でも小粒な青紫の花穂はセアノサス、別名カリフォルニアライラックです。斑入りの小さな葉との組み合わせがユニークな存在感を醸し出しています。原産は北アメリカ西部なのでジメジメとした湿気に弱く、カラリとした風がお似合いだなと言われてみればそんな気もしてみたり、、

それでは稼働中の現場の紹介からです。一見どこかの大学の講義室かしらという風情ですが、まさしくその通り、東急東横線の日吉駅前にある慶応大学のキャンパス内にある協生館・多目的教室が本日の現場。設計中のマンション案件の近隣住民の皆様への説明会をここで開催いたしました。ご多忙の中多くの方々にお越しいただきました。貴重なご意見ももちろんですが、皆様のお顔を直に拝見することで関わり合う世界の現実の手応えを肌で感じられたことが何よりの収穫でした、ありがとうございました。

日吉駅から歩いて一分もかからない距離にある協生館には、日吉の街に開放されたスポーツジムやカフェやバー、コンビニに英会話教室、保育園まで入っています。地下にはプールや駐車場があり、建物が面したグランドでは大学のサークル活動が行われていたりします。小学校や中学校は部外者に対して頑なな雰囲気を発していることが多くなっているのに比べるとなんて自由な気風なことか、と思いきやおそらく管理をしている運営サイドの立場からすると、なんて手間と労力がかかる建物かということになるんでしょう、一体いくつの防犯カメラが設置されているんでしょうね。

慶応大学の日吉キャンパスは線路と直行する方向に上り勾配で延びる銀杏並木が印象的ですが、実はその並木と校舎の間には、針葉樹が割とまばらに植わっているちょっと不思議な空気感を持つ中間的な領域があります。勾配のついた並木があって、床が真っ平らな校舎があってその間をつなぐための階段やスロープがある調整スペースなのですが、おそらくここに設計者の意図的なゆとりの配分があります。リズミカルに人工的に並らべられた自然と、幾何学の組み合わせによる建造物の間に配置されたさり気なさを装った自然。トンネル状に鬱蒼とした葉叢の暗さと、明るさに分割された壁面のコンポジションとの間に横たわる勾配は、不穏な社会の変化に対する鋭敏な感性の養成を目指した精神の痕跡なのかもしれません。